あらすじ
考古学者の父を失って天涯孤独となった少女アンは、
ロンドンに住む、父の知り合いの夫妻に引き取られる。
父とそれほど仲の良くなかったアンは
孤独ではあっても初めての自由な生活を楽しんでいた。
彼女はある日、
地下鉄で男が線路に落ちる瞬間を目撃する。
その場に居合わせた医者が彼を診たが、男は死亡。
医者は名乗りもせずすぐに立ち去ろうとするので、
怪しいと思ったアンは彼を追いかける。
しかし、エレベーターに間に合わず尾行は失敗。
その代わり、
彼が落とした「17・122 キルモーデンキャッスル」
と書かれたメモを手に入れる。
そのメモからは、
死んだ男と同じ強いナフタリンの匂いがしたため、
医者が彼から盗んだものと断定できた。
アンは証人として男の落ちる瞬間を裁判で話すが、
事故として片付けられてしまう。
その翌日、
川沿いの貸家で外国人の女の遺体が発見される。
その貸家に入る許可証は地下鉄で死んだ男が持っていたのだった。
地下鉄の転落死と貸家での殺人。
この二つの事件に関連性があることがわかったアンは
警察に相談に行く。
しかし、頭の固い刑事に相手にされず、
新聞社の社長に直談判にのりこんでやっと
記者として捜査する許可を得ることに成功する。
そこから彼女の冒険が始まった。
主人公アンの行動力がエグイというか、ちょっと信じられない。
*ここではアンの見せ場が露出します。
まだ知りたくない方は飛ばしてください。本筋のネタバレは避けています。
主人公のアンはおそらく10代後半の女の子なんですが、
行動力がおかしいです。コナン並みかそれ以上。
アンの行動力がおかしい場面
その1:大手新聞社に乗り込んで社長をだまして交渉
その2:全財産はたいて知り合いなしの状態で南アフリカに渡航
その3:船室に深夜に入ってきた血みどろの男をかくまう
その4:警察に追われても走ってまく脚力
その5:監禁されても普通に脱出。隠れながら監禁した人間をせせら笑う余裕っぷり
これがもし現代なら、
田舎の女子高生アンが東京に出てきて、
東京メトロで事件を目撃し、
独自調査をはじめる。
日経新聞の社長をだまして面会し、
その場で調査員になる契約をもぎとり、
親の遺産全額はたいて
横浜港から世界一周旅行の飛鳥Ⅱに乗って
南アフリカまで犯人のてがかりを追う。
南アフリカでは
警察から逃げたり、
監禁されることもあったが余裕で逃げおおせる。
コナンでもかなりきつい内容。
博士の発明品なかったらたぶん逃げられない。
交渉して大人を手のひらで転がしてるのもすごい。
オリエント急行やら、ナイル川の映画やるなら
むしろこっちを見てみたいですね。
絶対おもしろい。
アンはアガサ・クリスティ自身?のちの自分を予言するようなあらすじ。
*こちらもちょっとネタバレ。
アガサ自身は
1928年 元空軍大佐である夫と離婚し
1930年 14歳下の考古学者と再婚しています。
主人公のアンは
作中軍の大佐の好意を断って
ほかの男性と結婚します。
そして、アンの父は考古学者です。
アガサもアンも
軍関係の男性とは添い遂げなかった点。
考古学に造詣の深い人と家族になる点。
この二つが重なります。
実は、
茶色の服を着た男が発表されたのは1924年。
アガサが元空軍大佐の夫と離婚する4年前に書かれています。
もしかしたら
この小説を書いていたアガサはすでに最初の夫に対して愛情はなく、
考古学者の男性に惹かれていたのかもしれません。
予言の書??でしょうか。
推理もの毛嫌いしてたけど読みやすかったので入門におすすめ。
中学生の頃
推理ものが好きな女の子がよく話してくれたのは
人が殺されたトリックを
300ページにわたって考え続ける楽しみで、
全く理解できなかったんです。
でも、
この作品は読んでいて面白かったですね。
ロンドンから南アフリカの各地域まで
舞台が幅広く展開され、
主人公が無茶苦茶なことをやって
ハラハラする冒険小説ぽさが強かったので
読みやすかったです。
オリエント急行などで
アガサは陰鬱で嫌だなと思っていたのですが、
こんな感じの作品もあることに驚きました。
今度は何を読もうかしら♪
以上、
秋の読書におすすめの一冊。「茶色の服を着た男」女版コナンみたいな話。
でした。
コメント